相手を揺さぶる悪魔的心理会話術

「はじめに」



人間、誰だって会話をしている。

生まれたときから大人たちの会話を聞きなが

ら育ち、大人になった現在も、会話というコ

ミュニケーションを通じて仕事をし、喧嘩を

し、愛を語り、涙をながしている。会話のな

い世界、会話のない人生なんて想像すること

もできないだろう。




心理学的に考えた場合、会話のなかでやり取

りされる言葉は、さほど重要ではない。

むしろ会話を通して生まれる他者との関係、

人間関係におけるパワーバランスこそが重要

なのだ。

もし、あなたが会話の達人なら、いとも簡単

に相手の上にたつことができる。相手に厳し

い条件を飲ませ、意のままに動かすことがで

きる。あるいは、人気者となって輪の中心に

立つことも異性を惹きつけることもできる。

要するに会話とは、単なる情報伝達の、手段

ではなく、もっと大きな心理ゲーム、人間関

係を支配するためのパワーゲームなのだ。 

気づくと不利な立場に立っている、いつも損

ばかりしている気がする人は、きっと会話の

パワーゲームにまけているのだ。いつのまに

か相手に押し込まれ、釈然としない思いを抱

えながらしぶしぶ従っているのだ。仕事でも

プライベートでも恋愛においても。

人生を変えたいと思うなら会話を変えよう。

ただ言葉を並べるだけの会話ではなく、「パ

ワーゲーム」を支配する心理会話術を身に付

けよう。










【主語にみんなを持ってこい】
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「同調効果」を利用しろ




隣の部屋の住人が、大音量で、音楽を聞いて

いたとする。このとき、ただ乗り込んでいっ

て「うるさい!」と怒鳴るだけでは効果も薄

いし、逆恨みされる可能性もある。

そこで使えるのが「みんな迷惑してるんです

よ!」と、主語を『みんな』にしてしまうテ

クニックだ。




みんなが迷惑しているのなら、さすがに文句

は言えない。こうした心理のことを「同調効

果」という。

フロリダ・アトランティック大学の心理学者

(ビブ・ラタネ)は、744名の被験者を対象

に、同調効果について、次のような実験を行

った。

実験は、ネット上の簡単なゲームで、被験者

たちに「みんなで1つだけ好きな色を選ぼ

う」というもの。このとき、サクラの参加者

たちがあらかじめ示し合わせていた特定の色

だけを選んでいくと、約31%の人が意見に

同調することがわかった。

たったひとつの要因(同調)のみで、31%

もの人の心が動くというのは、心理学的にか

なり高い数字だ。




「言いにくいことは、『みんな』で」




同調効果を使いやすいのは、「言いにくいこ

と」を伝えるときだ。たとえば、子供はおも

ちゃをねだるとき、決まって「みんな持って

るから」と口にする。これは典型的な、同調

効果を狙った言葉である。

あるいは、定時で帰ろうとする部下に「みん

な残業してるぞ」と注意する。残業している

のが2から3人でもかまわない。「みんな」

と言えば、それだけで断りづらくなるのだ。

寄付やカンパを募るときも、「みんなやって

くれます」と、言えばなかなか断れないもの

である。また、役所の対応に不満があるとき

は、「国民をバカにしてるのか」といってみ

るのもいいだろう。






【まとめ】

人は「みんな」の意見には従う同調性を持っ

ている。












【話にたくさんの比喩を盛り込め】
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「SEはコンピューターのお医者さん」




難しい話を相手に納得させるには、とにかく

比喩を使うことだ。

例えばシステムエンジニアという仕事を説明

するのに、「ソフトウェアとハードウェアの

設計や構築、運用などをおこなう事業で」な

どと説明されても、専門家以外さっぱりわか

らない。そうではなく「まあ、コンピュータ

ーのお医者さんみたいなものですね」と比喩

を使って説明すればなんとなくイメージが湧

くし、納得できるというものだ。




「日頃から言い換える訓練を重ねる」




比喩を使うと、人は(たとえ理解できなくて

も)わかったような気分になってしまう。そ

してわかったつもりになると、ついその話を

受け入れてしまう。

人気のテレビ司会者やセミナー主催者など

は、みな比喩の達人である。

それでは、どうすればうまい比喩がだせるよ

うになるか。これは思考の柔軟性にも関わる

のだが、とにかく日頃から「いわば○○のよ

うに」「要するに○○で」「まるで○○みた

いに」と、物事を言い換える訓練をしておく

ことだ。それが難しければ、「たとえばね」

と言って具体例をあげるのもいい。それだけ

で普通の説明よりは、ずっと理解しやすくな

るはずである。




『比喩ポイント』

「いわば○○」、「要するに○○」、「まる

で○○」など

※○○部分がかけ離れているほど面白い。




【まとめ】

うまい比喩を使うほど、話は分かりやすくな

る。











【相手の『感情語』をくりかえす】
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「オウム返しの場所を選べ」




優れた聞き役のテクニックに、オウム返しが

ある。相手が「仕事、面白くないよね」と呟

けば、こちらも「おもしろくないよね」とそ

のままオウム返しをする。

そして単純なオウム返しになれてきたら、今

度は相手の「感情語」に注目して、それをオ

ウム返しするようにしよう。ここでの感情語

とは、発言者の感情語が最も表れている言葉

のこと。

たとえば、同僚が「先週、彼女と別れちゃっ

てさ」と打ち明けてきてら、「別れた?」と

オウム返しする。

また、友達が「俺、今度課長に昇進するん

だ」と嬉しそうに報告してきたら「昇進?」

とオウム返しする。間違っても「お前が?」

などと、ヘンな場所をオウム返ししてはなら

ない。




【まとめ】

相手が最も強調したい言葉、最も感情を込め

ている言葉をオウム返しする。













【相手の恐怖心をあおってみろ】
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「人は恐怖によって動く」




あなたは、自分が行動を起こすとき、その最

大の要因はなんであるか知っているだろう

か?  倫理? 論理? 善意?… 違う。

人を動かす最大の要因それは「恐怖」であ

る。こんなことをしたら嫌われるんじゃない

か、という恐怖。このままでは病気になるん

じゃないか、という恐怖。怒られるんじゃな

いか、クビになるんじゃないか、という恐

怖。これらがあなたを動かしている要因で

す。

例としてこの手法は、広告で商品をアピール

するのに最も多く使われています。「このま

までは太りますよ」「病気になりますよ」

「異性にモテませんよ」といったメッセージ

で恐怖心をあおるのだ。




「ロジックは、万能でない。」



ちなみに、このテクニックは子育てでもよく

使われている。「勉強しないとロクな大人に

なれない」「そんなことじゃみんなに笑われ

る」などは、代表的な例である。

もちろん、教育的・道徳的観点からみれば、

あまり子供の恐怖心をあおるべきではないだ

ろう。しかし少なくともビジネスシーンにお

いては、道徳や倫理など一切関係ない。恐怖

を散りばめた説得を駆使して、交渉を有利に

進めよう。誠意やロジックだけで人を動かそ

うなんて、大間違いである。




【まとめ】




人を動かす最も大きな要因は「恐怖」。

相手を動かしたければ、恐怖心をあおるよう

な言葉を使うといい。












【『聞こえるように』コソコソ話せ】
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「漏れ聞き効果」




映画やテレビの監督さんが、ADさんたちに

厳しいのは有名な話だ。これはなにも、監督

さんが激情型の人物ばかり集まっているから

ではない。彼ら一流の人掌握術なのである。



というのも、監督さんはADさんを怒鳴りつ

けることで、出演者やその他スタッフを威圧

しているのだ。こうした第三者経由の人心操

作を「漏れ聞き効果」という。



データを紹介しよう。

カルガーリ大学の心理学者(デビット・ジョ

ーンズ)は、次のような実験をおこなった。

まず「電話帳を引いて名前を調べる実験で

す」という名目で被験者を集め、待合室に待

機させる。このとき、待合室には2名のサク

ラの女性がいて他にも聞こえる程度の声で

「この実験面白いらしいよ」とか「この実験

退屈らしいよ」と話させる。そして実際に電

話帳での実験をおこなったあとに、被験者た

ちに実験への評価を尋ねたところ、「面白い

らしいよ」と漏れ聞いていた人たちは、「面

白かった」と答え、「退屈らしいよ」と聞い

ていた人たちは、「つまらなかった」と答え

たのである。




「大事な秘密を漏れきかせよ」




漏れ聞き効果が有効な理由としては、あくま

で「漏れ聞き」なので、警戒心が生じないこ

とが挙げられる。

また、たとえば社内でどうしても通したい企

画があれば、上司にギリギリ聞こえるくらい

の声で「ここだけの話、今度の企画、サンプ

ル調査の評判すっごくいいんだ」「営業の田

中さんも絶賛してくれたしね」などと漏れ聞

かす。そうすれば、上司も企画会議の席で、

いい評価を与えてくれるはずだ。



ポイントは、「聞こえるように」コソコソし

ゃべること。





【まとめ】


三者から漏れ聞いた情報は警戒心なく素直

に受け入れてしまう。